「はぁ~、なんだか新たな世界を垣間見た気分だねー」
カフェを出て人の溢れかえる街を歩き出した歌夜は、深々と息を吐いて紅志を見上げた。
「確かに……あれはあまり関わりたくない感じだな」
「あ、でもでも!バンドマンって意外とそういう妄想の対象になりやすいらしいんだって、腐女子からみたら。うちだったら紅志と海斗のカップリング?」
カップ………。
しばし固まる紅志。
「待て、待てよ?そりゃなにか?俺と海斗がデキてるっ思ってるってことか?!」
「あは~、もちろん本気では思ってないよぅ!あくまで妄想!!」
アハハ、と笑う歌夜を見ながら紅志は自分と海斗で妄想、もとい想像をしてみた……。
やべー、鳥肌どころじゃねぇ!鮫肌になっちまう!!
「あーーーっっ!!キモいわっ!!やめ!やめやめ!まさか歌夜、お前までそんな馬鹿なこと……」
歌夜の手をさり気なく握りながら、紅志がその横顔を覗き込む。
その彼女の顔が、ニンマリと笑うのを見て紅志は目を見開いた。
「かっ、考えてんのかよ!!?」
彼氏なのに紅志を妄想のタネに使う歌夜。
……まあいいじゃないか、紅志くん。