けど不思議と、あたしは怯えたりしなくて。
負けるものかと、丁寧に見つめ返してやった。
「…ふぅん。僕のこと怖くないの?」
「だって…好きで喧嘩やってるわけじゃないですよね」
「……どういう意味」
「だって…貴方、人を殴る瞬間、すごく辛そうな目をするから」
自分でも驚いた。
こんな状況で、こんな淡々と話せるんだと思った。
男の人は相変わらずあたしから視線を離さない。
よく見ると、すごく綺麗な顔をしていた。
色素の薄い髪をしていて、ブレザーがよく似合っていた。
あたしは一生、この人の姿を忘れないだろう。
そう思った。