即死。
そうしてこの家に暫しの暗がりが訪れ、今はその悲しみを乗り越えて元気にしているが、家主の妻はそれ以来この木を気味悪がっていたのだ。
というのも、メイベルが確信めいたことは言わないものの、「あの木は気味が悪い」と言い続けており、そしてその死。
半信半疑が、徐々に疑いに掛かっていく。
家主は幼かったので祖母の死など覚えていない。木を切らないでくれと言ったことさえ。
そして気味悪がる妻と、特に木に対する思い入れのない家主が最近のリフォームブームに乗っかり、あの木を切ろうという話を出しているのである。
木を切って、部屋を広くするのだ、と。
「お願い!この木を切るのを止めさせて!おばあちゃんは、皆の幸せを見守りたいだけなの!この木を切られたら私たち、消えちゃう!」
シェリーがフィンの外套(マント)を掴んで懇願する。
その緊迫感と裏腹に、門から子供たちが幼稚園バスから降りてぎゃいぎゃいと騒ぎながら家に帰ってきた。
「ママーただいまー!おやつはー!?」
「おやちゅー!」
「もうすぐで焼けるから、手洗ってきなさい。うがいも忘れちゃダメよ?」
「「はーい!」」
そんな声に、グレタは目じりの皺を一層濃くして、微笑んでいた。
グレタへと向けていた視線をシェリーへと向けて、フィンはシェリーの頭をグリグリと撫でてやると、ポンと胸を叩いて威張って見せた。
「…任しとけ。つまりはもう一回切ってはいけないって思わせりゃいいんだろ?」
「……出来るの?」
肯定的な返事が返ってきたことに目を丸くしながらシェリーが首を傾げる。
その疑惑の目にフィンはニカッと笑って自信有り気に答えた。
「神だからな」
呆れたエレンの鳴き声はシェリーの感謝の言葉に消えた。
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