暫くすると、フィンが九十度曲がる原因となったそれが目に入り、フィンはそれへと近寄るとしゃがみ込んで、植物のように地面から生えているそれ、生白い手を取り出すべく掘り返した。
押し潰された泣き声がくぐもって聞こえる。
「何てトコに埋まってんだよ……出してやるから泣くなって」
「苦しいよ…苦しいよ、助けて」
幼い少年のような声は土が掘り起こされるごとに段々と鮮明に聞こえ、土の中から引き出してやるとそれは喧しいほどに聞こえた。
黒のふわりとしたボリュームを持った衣装に、金のひし形がいくつか整列して並んでいる。
帽子は触覚のように二つに分かれ、赤い髪が帽子の隙間からボサボサと出ている。その顔は異常なほど真っ白だった。
そして唇は異様に赤く引きつった笑顔を作っていて、その全てが泥に汚れていた。
汚らしいそれは、ピエロのマリオネット(操り人形)だった。
「うわああん、うわあああん」
「うっせ!!泣くなよーもっかい埋めんぞ」
「嫌だよぉ、嫌だあ」
ギギギギギと鈍い音を鳴らしながら回らない首をゆっくりと動かして首を横に振ろうとする。
随分と長い間埋められていたのか、細部の隙間に土が入り、錆を起こしている。
うまく首が回らないので、まるで辺りをゆっくり見回しているかのようだ。
ため息をついて、フィン。


