それでもやはり人々(というか霊)の固定概念からすれば、やはり白=神という方程式が拭えないらしく良く間違えられる。


最初は面白かったが、千年以上そんなことが繰り返されればいい加減飽きるというものだ。


人間には姿が見えない所為で神を崇める人間を失望させることも出来ない。意味がないのである。


ともあれ、そんな見た目だけは救済者、中身はまるで違う死神のフィンは、新聞を読んでいたのだ。


そこには自然崩壊を嘆く声と、科学の進歩を喜ぶ声、天気予報やどうでもいい殺人事件や横領事件などが大きめの紙の裏表を使ってまで細かい字で綴られていた。


ここまで書くことがあると言う事実は面白いが、正直見辛い。


フィンが気難しい顔をしているのは、内容ではない。字の細かさとその密度に対してである。


そんな、夜の出来事。


乱暴に開け放たれた教会のドアの音に顔を上げて、特に驚いた様子もなくゆるく首を傾げながら新聞の記事を読んでいると、懺悔室のドアが荒々しく開けられ、互いの部屋の間にある細かい菱形の網目が幾重にも重ねられた金網にバン、と誰かが両手を付いて、小さなその隙間から覗き込んできた。



「どうしたの?」



新聞から目を離さずに、一言。



「やっと、やっと見つけました…助けてください……」



「助けて欲しいのでしたらもう少し態度を改められては如何ですの?ドアが壊れたらどうするんです」



先ほどからフィンの膝の上で休んでいたペルシャ猫のエレンが騒がしい音に不愉快そうな声を投げかけた。


それを片手で撫でながら宥めてフィンは新聞を畳むと相手に向き直った。