問題アリ No.2
『敗れた悪者』





ダンダンダンダン!!



それは日本で言う丑三つ時と呼べる、嫌に静かで粘ついた夜の一部のことだった。


睡眠を毎日太陽が昇った頃か、昼ごろから夕方まで取っている所為で夜にまったく睡魔が襲ってこないフィンは、塒(ねぐら)としている廃れた教会の懺悔室、神父が入るべきそこの、高価いソファに踏ん反り返って散歩途中で拾った新聞を気難しげな顔で捲っていた。


といっても死神にとって睡魔は嗜好と同じようなものなのだが。


森の奥のそのまた奥。


誰もこんなところに教会があるとは思わないという場所にある、捨てられた、忘れられた、置き去りにされた、そんな言葉が似合う、見捨てられた墓地を庭にしている教会に、フィンは何十年も住んでいた。


咎めに来る人間もおらず、人さえも通らず、そこで生活をしながらフィンは適当に仕事をして毎日を過ごしている。


仕事と言うのは残念ながら神父ではない。


フィンは地縛霊の未練解消を仕事としている。


霊のための神父、と言えば強ち間違ってはいないが、霊に罪を重ねさせて美味しく頂いてしまったりと好き勝手を繰り返しているので神父という一言でまとめれば御幣が出るだろう。



『神ってのが嫌いだから、その固定概念を利用して神のメンツをぶっ潰してやろうと思って』



服を白に統一したときに皆は黒を望むのに何故か、と問い、その答えにフィンが良く口にしていた言葉だ。


何処までも神のような容姿で、神から確実にかけ離れた存在の確立。


フィンが白を選んだのはそんな理由である。


神だと思って近付いてきた霊を、にっこりと笑顔で消滅させる、ないし、食べてしまう存在。


助けを求めていたときに助けに来なかった神を恨んだ末の行為だったが、実際の神は赤である。


まさに返り血を浴びたか生き血を啜りすぎて染まりあがったかのような、赤。