*
マルシアが動かなくなったのに気付いて、沸点が急激に下がった男は自分の手錠を外し、変わりにベッドの支柱へと付けてマルシアを繋ぎとめると風呂場へと向かった。
服を脱いでふと、洗面台の鏡を見る。
特に何が変わったわけではないのに、何かが違う気がするそんな微かな違和感。
影が色濃くなったかのような、僅かな白々しさ。
しかしその違和感の答えが出ない男はそれを気のせいだと思い込むと浴室へと入ってドアを閉めた。
浴室は微かにどの部屋よりも湿気をまとっており、男は少し窓を開けようと手を伸ばす。が、開かない。
鍵が閉まっているわけでもないのに、どれほどスライドさせようと力を込めてもビクともしないのだ。
「ちっ」
小さく舌打ちをしながら、シャワーのボタンを押してお湯を出す。
設定された温度のお湯を、細かい口から次々へと吐き出すシャワーを頭へと向け、乾いた身体全てを濡らす様に、全身へとシャワーのお湯を満遍なく掛ける。
微かにベタついた汗は先ほど女を執拗に殴りつけた所為だろう。
滑る身体に手の平を這わせて、綺麗に流すとシャワーを壁に掛け、立ったままシャンプーのポンプを押して手の平に石鹸を受けると頭にこすり付けて泡立てる。
室内の湿気の中に仄かな石鹸の匂いが充満する。
心地よい温度と湿気に満足げな男の背中を、突然、冷たい風が撫でた。
それはまるで、外の空気が無遠慮に流れ込んできたかのような、そんな風だった。
男は目を開けて、背後を見る。
その疑問そうな顔は、背後を確認しても変わらない。とりあえず、窓も確認するが窓は硬く閉じられたままだった。
首を傾いで、また頭を洗う。
そして壁に掛けていたシャワーから流れるお湯へと頭を突き入れた。
マルシアが動かなくなったのに気付いて、沸点が急激に下がった男は自分の手錠を外し、変わりにベッドの支柱へと付けてマルシアを繋ぎとめると風呂場へと向かった。
服を脱いでふと、洗面台の鏡を見る。
特に何が変わったわけではないのに、何かが違う気がするそんな微かな違和感。
影が色濃くなったかのような、僅かな白々しさ。
しかしその違和感の答えが出ない男はそれを気のせいだと思い込むと浴室へと入ってドアを閉めた。
浴室は微かにどの部屋よりも湿気をまとっており、男は少し窓を開けようと手を伸ばす。が、開かない。
鍵が閉まっているわけでもないのに、どれほどスライドさせようと力を込めてもビクともしないのだ。
「ちっ」
小さく舌打ちをしながら、シャワーのボタンを押してお湯を出す。
設定された温度のお湯を、細かい口から次々へと吐き出すシャワーを頭へと向け、乾いた身体全てを濡らす様に、全身へとシャワーのお湯を満遍なく掛ける。
微かにベタついた汗は先ほど女を執拗に殴りつけた所為だろう。
滑る身体に手の平を這わせて、綺麗に流すとシャワーを壁に掛け、立ったままシャンプーのポンプを押して手の平に石鹸を受けると頭にこすり付けて泡立てる。
室内の湿気の中に仄かな石鹸の匂いが充満する。
心地よい温度と湿気に満足げな男の背中を、突然、冷たい風が撫でた。
それはまるで、外の空気が無遠慮に流れ込んできたかのような、そんな風だった。
男は目を開けて、背後を見る。
その疑問そうな顔は、背後を確認しても変わらない。とりあえず、窓も確認するが窓は硬く閉じられたままだった。
首を傾いで、また頭を洗う。
そして壁に掛けていたシャワーから流れるお湯へと頭を突き入れた。


