問題アリ(オカルトファンタジー)

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テレジアは昨日と同じ時間にやってきて、ソワソワと祭壇近くの長椅子に腰をかけてフィンを待った。


暫くしてエレンを肩に乗せたフィンが出てくると、テレジアは即座に立ち上がって、何やら昨日の礼をし始めたがフィンはそんなことに興味も無いのでにっこりと笑って片手で制すると、先を歩き、教会を出た。


出たところで、歩くのが面倒くさいと、エレンを白熊を三頭並べたような大きさに変化させ、それにテレジアを乗せて自分も乗ると、恐ろしい速さでテレジアの店の場所へとやってきた。


しかしそこはシャッターの閉まった店があるだけで、妹の気配は勿論無い。



「ああ、私のお店……」



「違いますわよ」



エレンは巨大化したままで、店の二階にある生活スペースを覗き込みながら彼女の言葉を否定した。


何のことかわからないテレジアはエレンを見上げて首を傾げる。


そんな彼女に、今度はフィンが答えた。



「もう君の店じゃない。ここは中の家具も全て売り払われた立派な不動産の物件の一つだ」



「う、嘘!誰が…そんな…」



言いながらテレジアはエレンの身体をよじ登って、二階の窓から部屋の中を覗く。


そこはもう生活の色さえも窺えないほど、ガランとしていて、かつてあったはずの人の温もりさえも感じられなかった。


妹は未だ帰ってきていない。それはわかっていた。けれど、中の物が全て売られて、両親から引き継いだ店が売られているなんて。



「あの男が……アイツが、あの子のものになった財産を全て売ったのですね…」



「そうかもね。今、妹さんはそのストーカー男と一緒に暮らしているらしい。都市部でね」



「…都市部は、危険な街だと聞いています。犯罪が横行し、麻薬や人身売買が絶えないと……まさか妹は人身売買に…!?」



「大丈夫ですわよ、まだ生きていらっしゃいましたもの」



エレンの言葉に胸を撫で下ろしながら、急かすようにフィンへと声を掛けた。