問題アリ





草が生え放題の、鬱蒼としたその敷地。


門を抜けると、一メートルほどはある雑草が脇を固める一本の道が、その敷地の中に大きく聳え立つそれへと向かって伸びている。


屋根の上に、それらしい十字架を掲げた、忘れ去られた教会。


白い外壁は雨風で汚れ、所々ペンキが剥げ、落書きのようにあちらこちらにヒビが入っていた。


美しいステンドグラスは窓と言う窓に幾つも付けられていたが砂埃被っている所為でその美しさも半減している。


そんな、悟りを開き、人々を救済すべく建てられたはずの建物の、なんとも残念な現状の傍には同じく見捨てられた墓地。


もう名前さえも確認できないほど削れて汚れたそれは、もう何十年何百年と忘れ去られた哀れな石の塊。


捨てられた、忘れられた、置き去りにされた、そんな言葉が似合う、ここは米国のとある森の奥をさらに奥へと向かった場所。


見捨てられた墓地を庭にした、廃れた教会。


しかし、廃れた教会のその中は外見とは違い、新品同様に綺麗な物だった。


木で出来た扉から中へと入ると、五人掛けの長椅子が左右に十列ほど、真ん中の通路を挟んでズラッと並んでいる。


真ん中の通路には赤絨毯。壁は白で統一されており、窓には細長いステンドグラスがはめ込まれている。


赤絨毯は奥の祭壇辺りまで伸びており、祭壇には十字架に掛けられたキリストの像やら大きな蝋燭やらが並んでいた。


100人ほどは余裕で収容できるその教会の右奥には懺悔室があり、三畳ほどのスペースにベロア生地をクッションにした木製の焦げ茶色の椅子が一つある。


その部屋に入った奥には扉がもう一つあり、その奥は神父が待機する場である。


勿論、捨てられた教会に神父などいるはずもない。


しかし、そこには一人いるのだ。


白いシャツに、白いズボン、白いベルト、白いネクタイ、白いブーツに長い白の外套(マント)、そして白く襟足ほどまでしか伸ばしていない、髪。


ボタンや指輪などのアクセサリーはゴールドで、それ以外を覗けば全てが白い、青年だった。