ザワザワ……



樹が擦れ合って、大きな音が響く。

周りには楽しげに歩く女の子たち
バカ騒ぎしながら校舎に入る男子たち。



初めて袖を通した制服に少し違和感を感じながら、あたしも校舎に向かって歩き出す。







―神奈川県立藤野高等学園






あたしのすぐ横で春のそよ風が吹いた。

5月の中途半端な時期に転校なんて……有り得ない。




靴を履き変えて職員室に向かう。

“担任”とか言う年寄りの男の先生にクラスを教えられて、なんとなく案内される。




角を幾つも曲がって、階段を何度か上って
あたしは“2-A”と書かれた教室の前に来ていた。





「先生が呼んだら、教室に入ってきてくださいね」

「…はい」



先生の前では落ち着いたそぶりを見せるけれど、心臓は暴れまくっていて足は小刻みに震えていた。




ただでさえも人見知りで人前で話すなんて苦手なのに……。

先生の悪魔。
先生のコンコンチキ。



もう……。