recollectionⅡ‐遠い音‐




それだけ言って、別れた。

体育館にある時計を見ると
紗織が教えてくれた
演奏の時刻に近付いてきている。

「座ろうか」

そう言って
適当な場所に腰を置いた。

通路側、一番後ろの場所だ。

目が悪いが、
眼鏡を持ってきたので見える。

「さて、どうでしょうねぇ」

怜佳に言う
私の口元が綻んでいた。

「わかちゃん楽しみにしてたもんね」

怜佳はデジカメを出して
いじっている。

そんな姿に、また笑みが漏れた。

――あぁ、自分って幸せだなぁ。