恋するキモチ

慌ててもらったしじみ汁を飲み干して、着替えを済ませる。
時刻は8時15分。希美の家は、警視庁から歩いて十数分程度の場所にあるので、十分間に合う。

「それじゃ希美、ありがとうね」

そう言って家を出ようとした時だった。

「おや、京子ちゃん、家に泊ってたのかい?」

不意に声をかけられる。
京子ははい、と頷いた。

「今日は出勤かな?」

聞かれて、京子はまた、頷いた。

「せっかくだから、乗せて行ってあげるよ」

にっこりと笑う希美の父に、京子は顔をひきつらせて、ぶんぶんと首を横に振った。

「い、いえいえ!大丈夫です、歩けますから!」

慌てて断る京子に、希美の父は首を傾げた。

「どうして?行き先が一緒なんだ。問題ないだろう?」

そう言うと、希美の父は京子の手を引いて玄関のドアを開けた。

「それじゃ希美、行ってくる」

「はいはい、行ってらっしゃい」

呆れたような表情で、希美は二人を見送った。