数多くの男が言い寄ってきた。
それも、皆大人ばかり。
同年代には相手にもされない。

同年代は皆、届かぬものだと決めつけ、わざわざ手を伸ばしてくる者はいない。
大人は皆、少しでも鶴賀にあやかりたいと私に狙いを定めてくる。

いや、それは兄も同じか。
次々とどこぞのご令嬢を紹介され食事にでも、と誘われる。

そんな状況、楽しい筈がない。


「隼（はやと）様がお呼びでしたが、どう致しましょうか」


ただ流れてゆく車を眺めていると、嶌田が口を開いた。
少々、困惑した表情で。

この男は知っているのだ。


私と、兄の関係を。


「一度、家に帰るわ」


それだけ答えると、嶌田はかしこまりました、と落ち着いた声で言葉を返す。
バックミラーに見えたその顔は、私の顔を心配そうに見ていた。

実の両親に心配されず、赤の他人である嶌田に心配されるのも甚だ可笑しい。
尤も、両親に兄との関係などは知られていないのだから心配もしようがないが。
嶌田は私の言うことには逆らえないからだ。


中学に上がる際に私の運転手兼付き人になった嶌田は、あの時以来私に忠誠を誓っている。
私が強制したのではない、嶌田自らがそうしたのだ。


本当、大人ってわからない。