江戸期から続く、鶴賀(つるが)の家系。
血筋自体はもっと遡るのだろうが、現在の家柄は江戸期だと聞かされている。

機織りから始まり、呉服屋に発展、その後大手の紡績産業企業となる。
代々直系男児が企業を継ぎ、それはまるで冗談のように繁栄が続いている。

現在は父がトップに君臨しているが、やがて兄に受け継がれるのだろう。


その兄は、あちらこちらの雑誌の表紙を飾るモデルとして今は働いている。
日本人離れした風貌に、多くの女性が虜になるらしい。

ただ、映画やドラマのオファーは一切受けない。
今以上忙しくなっては、経営のノウハウを学べなくなるからだ。
だから海外から呼ばれても兄は行くことがない。


そんな兄に美しい風貌を授けたのが、元有名女優の母だ。
昭和を代表する女優とまで言われ、長い手足に清楚な顔の造りで一世を風靡したらしい。

現在は完全に引退し、父のサポートへと周り、見事な内助の功となっている。
社交場には必ず顔を出し、会場に華を添え、衰えてもなお気品溢れるその美貌を役に立てている。



そんな、創作物みたいな家に私は生まれた。


といっても私はただの高校生だ。
我が家の方針に乗っ取って、学生の間は余計なことは一切しない。
あの母に娘がいると知って、多くの芸能プロダクションが我が家を訪ねたが、父は一切首を縦に振らなかった。



でも、ただの高校生というには皆と違い過ぎる。