確かに、まだ灯りが点いている。
それでも話し声などはしなかったし、人がたくさんいる気配もしなかった。

 
私はこんな時間まで生徒会室にいたこともなかったから、誰が遅くまで残っているかなんて知らない。
だけど、このドアを開けるしかないだろうと、腹をくくった。


「もうこの部屋は閉めますが。何か御用でしょうか」


ドアを開けた瞬間、こちらに背中を向けた男が声を発する。
確認しなくても斑鳩だとわかる。

 
いつもと変わらない、冷静な声。

 
私がいつまでも声を出さないでいると、斑鳩がゆっくりと振り返った。
その顔が、いつも以上に目を見開いている。


 
カーテンの締め切られた生徒会室は蛍光灯の光でとても明るい。
斑鳩の顔がいつも以上によく見える気がする。

 
ドアを閉めて、一歩足を踏み入れると斑鳩も立ち上がった。
そして何かを言いかけたが、私はそれを手で制す。
 
黙って立っている彼の表情は、珍しく落ち着いているようには見えない。


「聞きたいことがあって来たの」


生徒会室には他に誰もいなかった。
確認したわけではないが、他に呼吸が聞こえない。


「貴方は、私のことを好きだと言ったわ。それは本当?」


斑鳩との距離は五メートルぐらい。

少し離れたところだから、よく見える。


「ええ。偽りはありません」


会話を思い出したのか、斑鳩の表情がいつものものに戻った。
声も落ち着いている。