屈折カタルシス[短篇]

「会長、明日の集会ですが」


座ったままでいると、プリントの片づけをしていた斑鳩(いかるが)が無機質な声を私に向ける。
四角く細いフレームの眼鏡の彼は、女子生徒に人気のある副会長。

私とは違って、人望もある。


「ああ、挨拶があるのね。わかったわ、何か考えておく」

「お願いします」


この男は嫌いではないが、何を考えているかわからない節があって特に好きにもなれない。
いや、考えていることがありありとわかる他の人より、まだマシなほうだろうか。



もう一人黒板を丁寧に掃除していた書記の佐野(さの)さんは、無言のまま片づけを続けていた。
彼女は、去年無理矢理生徒会に入れられてしまったクチだろう。
大人しく、何をするにも控えめ、それでいて自分の仕事はきっちりこなす。

そんな彼女がある意味一番信用できた。

私に必要以上に話しかけることもない、媚びることもない。

選挙に受かってしまったその日から、自分のやるべきことを理解している。
無理にクラスで推薦されたとしても、それが現実だと受け止めている。


だから、私も彼女には微笑まなかった。
いや、微笑まないのは斑鳩も同じことか。

彼にはそんな微笑みは必要なかった。
優秀な、副会長も自分のやるべきことをしっかりと理解している。


目立つだけ、注目されるだけの生徒会長の補佐として、しっかりと仕事をせねばならない、と。