「それでは、今年の予算はそれでお願い。あとは何か連絡事項があるかしら?」


気だるい日差しが差し込む小さな会議室。
コの字に配置され長机に皆が緊張した面持ちで座り、配られたプリントを必死で見ている振りをしている。

今年一番初めの生徒会会議は、私が就任した頃と同じように、無駄な緊張感に包まれていた。


「ないならば、今日はこれで。また今年も宜しくお願いしますね」


どうして、私がここで笑顔を作らねばならないのだろう。
愛想を尽くして、皆の気を緩めて。

生徒会長を退任するまで、平穏にことを進めてゆかねばならない。


案の定、皆一様にほっとしたような表情を浮かべ、議長によって終わりの言葉が告げられると同時に立ち上がる。
誰もが私の方に一礼してからこの会議室を出てゆく。

残ったのは、生徒会メンバーだけ。
それも私を含めてたった三人。


上に立っていればいいだけの生徒会長が、どれだけ楽で、どれだけ苦痛か。

きっと誰もわからない。



だって、皆他人であって、私じゃないから。