汗を乗せた兄の背中は、どこまでも私に安堵感を与えてくれる。

唯一、私が私でいなくていい時だろうか。

兄も、兄でいなくていい時だと思っているのだろうか。


密着する兄の肌が、どうしようもないぐらい愛しかった。

愛しい。
でもこれは愛しているわけではない。


愛し合っているわけではない。


 
ただ、お互いを求めているだけなのだ。


その結果が、世間一般には受け入れてもらえないだろう二人の関係を作っている。
勿論、受け入れてもらおうなどとは思っていない。

 
わかってもらえなくて結構。
寧ろ、わかる筈がない。

 
人はこう言うかもしれない。

歪んだ愛情の元、充分に親の愛情をもらえなかった結果じゃないだろうか。

 
そんなの、愚問だ。
私達は、あの両親には充分大切にされてきた。
家柄に不満があっても、両親には一切ない。


それどころか、忙しい中それでも私達のために時間を割いてくれる両親に感謝さえしている。
幼稚園の頃から運動会や授業参観、すべてのイベントには笑顔で両親が揃って来てくれていた。

両親には愛されていたし、私達も両親を愛していた。
そして、同じように兄も家族として愛していた。