「サンタさん…お願い聞いてくれるかなぁ。」

ヴィヴィアンは、ぼんやりと窓の外を眺めた。

辺りは、昨日の夜から降り続く雪と、沢山のイルミネーションで、キラキラと輝いている。



去年のクリスマス。

ヴィヴィアンの母親は、突然居なくなった。

『良い子にして、待っててね。』


その一言を残して、母親は消えた。


「私は…良い子じゃ無かったのかな。」

ぽつりと呟くと、じわりと涙が出た。

(…しょっぱい。)

セーターの袖でごしごしと涙を拭くと、大きく息を吸い込む。

(大丈夫。サンタさんに、お手紙書いたもの…きっとお願いを叶えてくれるわ。)


ヴィヴィアンが窓に手を掛け、閉めようとした時、雪とイルミネーションのキラキラの中に一瞬、人影が見えた気がした。


「……誰?」


目を凝らすと、雪の様に白い肌の少年が傘も差さずに歩いて来るのが見える。

「大変!風邪ひいちゃうわ!!」

ヴィヴィアンは、玄関にある赤い傘と手袋を掴むと、雪の中へと飛び出した。



「ねぇ。風邪ひいちゃうよ?」

その声に、少年は顔を上げた。

『僕は大丈夫だよ。』

言ってから、ふっ。と笑う。

ふわふわと落ちて来る雪の様にやわらかい少年の笑顔に、ヴィヴィアンは思わず声を上げた。

「天使さん?」

『ははっ。違うよ。よく言われるけどね。』

そう言って少年はウインクをしてから

『落とし物を届けに来たんだ。』

と言って、ポケットから汚れた水色の紙切れを取り出した。

「…なぁに?」

ヴィヴィアンは、その紙切れを受け取ると広げ、書かれた文字に目を落とす。


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サンタさんへ

プレゼントはいらないです。
だけど、ママにあいたいです。


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「これ…私が書いたものだわ!サンタさんが、落として行っちゃったんだ!」

顔を上げたヴィヴィアンの目からは、今にも涙が溢れだしそうだ。

「どうしよう!お手紙忘れたら、もうお願い聞いて貰えないよ!!」

ヴィヴィアンの、すがる様な目を見た少年は、ぽつりと呟く様に言った。

『そのお願い…僕が叶えてあげようか?』