「もう帰っちゃうの? 父上が礼がしたいと言っていたのに……」

「偶然、居合わせただけだ」

 そう発して青年に背中を向ける。

 皇国、唯一の国際空港は清潔さを有し海外からの人間をもてなす空の玄関口に相応しく壮大さも備えていた。

「元気で……」

 去っていく彼の後ろ姿を見つめる。

 本当は諦めたくない……でも、彼を『かごの鳥』にはしたくない。

 自由に羽ばたいてこそ、俺はその姿に惹かれたのだから。