「……」

 彼──ベリル・レジデント──は、自分の手を握りしめて潤んだ瞳で見つめる青年に眉をひそめた。

 以前、ルシエッティ王国のノエル王女の護衛を頼まれた事から目の前の青年、レオン皇子とのつながりがある。

 ここは、ルシエッティ王国の隣国に位置するフォシエント皇国の皇族が住まう城──第一皇位継承者であるレオン皇子の自室だ。

 元々はノエル王女を狙っていたレオン皇子だったが、ベリルに諭(さと)されそのまま彼に恋をしてしまったのだ。