清冽なその顔に憂いを滲ませ、けれどガラス細工の様に繊細な指先は五角の勇将達を優雅に操る。


パチン。


……香歩さんの手を見て、考え、読んで、ひたすらに最善を尽くした。


それなのに、この狭い盤面は無慈悲にも現実を突きつける。


僕の玉将はまた逃げ場を失い、薄い守りに囲われて。まるで数分前に戻ったのかと錯覚せずにはいられない。


「う…」


苦し紛れの一手。それはイタチの最後っ屁にもならず、香歩さんの最後の一手が指される。


パチン。


『と金』が『玉将』の前に指し出された。


……『玉将』を救うすべは、ない。


詰み。


香歩さんが、呟く。


世界は、うるさい。と。