夕陽が出てきたのか差し込む陽光が赤みを帯びる。 いつしか教室は蜜色に染まって、9×9の盤面にも駒が並ぶ。 「今度は負けません」 僕の負け先手。 初手は7六歩。 遠くに聞こえる、野球部の打撃音。バレー部の掛け声。合奏部の不協和音。 そのいずれもを切り裂く打ちつける駒の音は教室にたゆたう静寂に波紋を起こす。 パチン。パチン。 幾重にも重なる刹那の戦音は徐々に僕を劣勢へと導いていく。 香歩さんが言う。 この音は、いい。 この音だけが私を私らしくさせてくれる。 パチン。