「先手、2六歩」


……はい?


振り向くと目があった。


まるで対戦を終えたボクサーみたいにタオルを頭から被っている。


「次、君よ」


これは、え~っと目隠し将棋なのか?


あんまりやったことないから自信がないんだけどな…。


「嫌?」


「嫌って訳じゃないんですけど……」


「なら、付き合いなさい」


「……わかりました」


少々強引な気はするけど、まぁ沈黙を守るよりかはマシだろう。


「じゃあ、後手3四歩」


「2五歩」


「3二銀」


いつも通り、香歩さんは原始棒銀を展開していく。


「7六歩」


……僕の上げた3二銀を考慮しての角道か?


「4四歩」


角交換を拒む一手。転じて僕はここから四間飛車を決めに掛かる。


「3八銀」


「4二飛」


あとは囲いを組むだけ……。なのだけど。