「私の勝ち」


ありません。そう僕が降参するより先に香歩さんが言う。


「これで通算は私の三九七勝零敗」


「通算なんて覚えてるんですか?」


「当たり前よ。部員なんて、私とあなたの二人しかいないんだから」


……いや、でもだからと言って覚えてる理由にはならないと思うんだけどなぁ。


「それで、あなたはどうして私の顔を見つめてたわけ?」


「いえ、見つめてたわけじゃ」


「そうね。確かに見ながら呆けてた感じだったしね。


一体私の顔に何を映してたのかしら」


「……」


カチカチと盤面に再び駒が並べられていく。


もちろん僕の分も。