* * *


香歩さん。


桂 香歩さんは僕の一つ年上で、当たり前だけど先輩である。


いつも無口で、というか寡黙な人でその美貌と相まって香歩さんのファンは多いらしい。


こういうのをなんて言うんだったけ。


クールビューティーだったかな。


まぁそれはさておいて、香歩さん自身に聞いた訳じゃないけどファンからの黄色い声も多分、喧しい雑音の一つなんだろうな。


「……何?人の顔ジッと見つめて」


パチン。


今日もまた、静かな教室に清冽な駒の音が鳴る。


盤面は、なるほど。


いましがた指された『銀将』は緩やかに僕を敗北に追い込む見事な一手だ。