頭の片隅に話し過ぎかもという不安はあったが、
ハヤトにはなぜか、何でも話してしまう。
会って間もないのに、不思議と知られることへの警戒がまったく無かった。

ハヤトには、人の悩みを上手く聞きだす能力があったのだ。
現に当日ハヤトは、友人である女の子の恋愛相談にのり、海に行きたいというリクエストにより、寝ずに海までドライブしてきたという。

一睡もせずに私と同伴とは…
なんだか申し訳ないなぁと思った。
でも他人の悩みを一生懸命聞いてあげられるハヤトを素敵だと思った。

確かにハヤトには、何でも話してしまいたくなる「何か」がある。
だからこそハヤトは、よく周りから相談事をされるのだろう。
この子はホストに向いてるかも。
私はそう思った。

気付いたら2時間経っていて、
ハヤトとの初めての同伴はあっという間だった。
緊張もせず、猫を被ることも無く、素直に同伴を楽しむことが出来た。


会計は割り勘かな? と勝手に思っていたのだが、
隣に居るハヤトの財布の中をチラっとのぞくと、お札が一枚も入っていなかった。
奢ってもらう事前提で同伴に誘ったんだということに気付いて少しゲンナリしたが、
まぁ「新人ホスト」だし。と諦めるしかなかった。

ホストとの同伴では、お客さんがお金を出す派と、
ホストがお金を出す派で意見が分かれる。

私は前の担当である聖司が毎回同伴でお金を出してくれていたため、
なんとなくホストがお金を出す派だった。
だからこそガッカリしたのかもしれない。

でも今日は楽しかったからいっか。
寝ずに同伴してくれたんだし。
そう思って私は会計を済ませた。


そして私達はそのまま「COLORS」へと向かった。