Memory's Piece



「ぐぼぁっ!」


ボクの足元が綺麗になりはじめた頃に残しておいた一際大きな塊をピッチャーフォームで全力投球すると頼兎が意識を手放した。


「やっと逝ったか。」


額に溢れた精神的な汗を拭うようにして、ふぅ。と息をつくと、零一が「やり過ぎじゃない?」と笑った。

ふざけろ。止めなかった零一も同罪だ。


「零一、コレ持って。ちょい移動するよ。」


「はいはい。アンタの家まで?」


「違う。」


「そ。まぁ、いいわ。」


よいしょっと、零一が頼兎を持ち上げる。

もちろん、横抱きで。

所謂お姫様抱っこってやつだ。

もし頼兎に意識があったら絶叫していそうな持ち方にボクは吹き出そうになる笑いを必死に堪えた。

魔女っこコスの男をお姫様抱っこするバリバリのニューハーフ。

これを笑わずにいられるだろうか。


「零一!ボク写真撮る!!ちょい待って!」


「はぁ?」


ポケットからカメラを二つ取り出して構えるボクに零一は怪訝そうに眉間に皺を寄せて振り返った。

こんなシャッターチャンスを逃せる訳ないジャマイカ。

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