ダメだ。

いまここで桃亜姉達のもとから去ったらアイツが何か仕掛けてくるのは目に見えて明らかな事。

真っ赤でどす黒い衝動をグッと押し込めて、ボクはイライラと尻尾を振った。


「みーちゃん・・・・」


いらつきに気付いたらしい桃亜姉が宥めるようにボクの頭を撫でる。

それでもしかめっ面を緩めないボクに桃亜姉は不安げだ。

『帰れ』と言われるかもしれないと感づいているのかもしれない。

そう、あの場所に戻ってくれたらどんなに楽なことか。

夕妃に会ってから何度も考えてるのに答えが決まらない。

あの優しく暖かな場所は母さんが何処にもいけない桃亜姉に対してあげた安全で安らげる場所。

帰したほうが良いと分かってるはずなのに。

なのに渇ききった心が桃亜姉と離れることに悲鳴を上げる。

・・・・矛盾してる。

でも分かっていても渇きに抗う術が今のボクにはない。

大事なものが増えることはそれだけ弱くなるってこと。

臆病になって、脆くなる。

桃亜姉だけじゃない。
波狼に頼兎。

みんな、大事で・・・大切。

初めて心が許せた愛しい赤の他人達。

だから・・・・・たまに思う。

拒絶するくせに独りになるのが恐いボクの対応はこの二人にはどんな風に映っているんだろうかって。

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