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「今夜、宴を開こうと思う」



そう陛下に言われたのは今朝。



流れる音楽に合わせて楽しそうに舞う人々を眺めながら、俺は姫に目を向けた。



陛下の隣に腰を下ろし美しく着飾った姫。



美しい…俺は素直にそう思った。



無理もない。今日の宴は姫の婚約者を探すためのものなのだから…



しかし、姫は今夜の主役だというのに浮かない表情を浮かべている。



無理もないか…



姫の中にはまだ……



「ヴェネット」



ぼんやりと考えていた俺の耳に聞こえたのは、俺の名を呼ぶ姫の声。



姫はパタパタと俺に近づくとにっこりと微笑んだ。