――コンコン…



姫…



中からは何の返事もなかった…



「姫、私です」



俺は無意識にドアに向かって言葉を発していた。



もしかしたらこのドアが開くことは無いかもしれない、それでも俺は姫を思うとそのまま立ち去るなんてできなかった。



ガチャリ…



ドアが開いて顔を覗かせた姫を見て、俺は嬉しさと何とも言えない気持ちで一杯になった。



俺が姫に頭を下げると姫は消え入りそうな笑顔で俺の名を呼んだ。



「婚約を解消して帰ってきちゃったわ。私にはやっぱりまだ結婚なんて早かったのね……」



無理に明るく振る舞う姫。



まただ…