バルコニーに出ると、少し肌寒い感じがした。



チラリと姫を見ると胸元と背中が大きく開かれたドレスを着ていた事に今更気付き、俺はふと自分が正装で纏っている布に手をかけた。



しかし、その時の俺はそれを姫にかけるほどの度胸がなかった。



「……なのに」

「え…」



姫はバルコニーの手すりに体を預けながらボソリと呟いた。



「結婚なんて…嫌なのに…」



まだ王子の事を思っているんですね…



俺は胸がチクリと痛んだ。



しかし…



「姫…」



俺はあくまでもこの国に、国王陛下と姫様に使える騎士なのだ。



「そのような事をおっしゃってはいけません」