今日は、ドレスを選びに行った。
というか・・・先生が選んだドレスを、見に行った。

レースとかフリルとかスパンコールとか、コテコテとついたドレス。
ビローンと長くて、誰かに踏んづけられそうなドレス。

私、もっとシンプルなのがいいんですけど・・・。
と思ったけど、先生が気に入ってるみたいだし文句は言わなかった。
私にとっては、人生最高の日じゃないし。
下から数えて4番目の日に着るドレスだから、正直どうでもいい。

先生はさっきから、左ハンドルの車の運転席で、自分の手術の武勇伝を話してる。
この話・・・もう3回聞いた。
この先あと何回、聞かされるんだろう。

やっと家に着いた。
百合はそそくさと車を降りる。
雨が上がって間もないせいか、この季節にしては少々肌寒い。
その涼しさが、今日はやけに心地よく感じる。

「夕食、ごちそう様でした」
うん、ご飯はおいしかった、ほんとに。
先生の自慢話がなければ、もっとおいしかったけど。

「今日の君は、本当にきれいだったよ」
桜庭先生が、上気した顔を寄せてくる。

え・・・

百合が逃げる間もなく、桜庭は百合の肩を両手で押さえた。
そして百合の顔を自分の顔の前に引き寄せてキスした。