でも・・・
歩が好きだったビーフシチュー。
歩が好きだったハンバーグ。
歩が好きだったオムライス。
歩が好きだったシュークリーム。
それを、歩と同じような顔して、嬉しそうにほおばるあの子の笑顔を見ると、つい作ってあげたくなってしまう。
分かってる、あの子は歩じゃないって。
こんなことをしても、許してもらえるわけじゃないって。
別人なんだから。
180℃で30分。
焼いてる間に、カスタードクリームを作るわね。
これも、好きだったわよね?
分かってる、あの子は歩じゃないって。
分かってる。
・・・頭では。
オーブンの窓から、シュークリームの皮が少しずつ膨らんでいくのを、飽きもせずに眺めていた歩の姿が脳裏に浮かぶ。
「ごめんね」
由紀子はあの時から始まった、何万回目かの独り言をつぶやいた。
返事はない。
そう、返事はない。
永遠にない。
由紀子は突然、キッチンの床にくずおれる。
その厳然たる事実に、押しつぶされそうだった。
こみ上げてくる絶望を、必死で押し殺す。
分かってる、あの子は歩じゃないって。
あの子が笑ってくれたって、何の罪滅ぼしにもならない。
分かってる。
分かってる・・・。
由紀子はシンクの縁につかまってなんとか立ち上がる。
涙を袖で押さえると、ボウルに卵を割りいれた。
歩が好きだったビーフシチュー。
歩が好きだったハンバーグ。
歩が好きだったオムライス。
歩が好きだったシュークリーム。
それを、歩と同じような顔して、嬉しそうにほおばるあの子の笑顔を見ると、つい作ってあげたくなってしまう。
分かってる、あの子は歩じゃないって。
こんなことをしても、許してもらえるわけじゃないって。
別人なんだから。
180℃で30分。
焼いてる間に、カスタードクリームを作るわね。
これも、好きだったわよね?
分かってる、あの子は歩じゃないって。
分かってる。
・・・頭では。
オーブンの窓から、シュークリームの皮が少しずつ膨らんでいくのを、飽きもせずに眺めていた歩の姿が脳裏に浮かぶ。
「ごめんね」
由紀子はあの時から始まった、何万回目かの独り言をつぶやいた。
返事はない。
そう、返事はない。
永遠にない。
由紀子は突然、キッチンの床にくずおれる。
その厳然たる事実に、押しつぶされそうだった。
こみ上げてくる絶望を、必死で押し殺す。
分かってる、あの子は歩じゃないって。
あの子が笑ってくれたって、何の罪滅ぼしにもならない。
分かってる。
分かってる・・・。
由紀子はシンクの縁につかまってなんとか立ち上がる。
涙を袖で押さえると、ボウルに卵を割りいれた。



