かえりみち

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今日の夕飯は何にしようかしら。
･･･ビーフシチュー？
いや･･･さすがにひと月に三度も作ったら、飽きられちゃうかも。
幸一さん、メタボが気になる年頃だし。

由紀子は、絞り袋にシュークリームの生地を詰めながら考えている。
歩がおいしいって言ってくれたシュークリーム。

あの子が来てから、まだ１ヶ月なのね。
ひどい人見知りって聞いてたのに、うちにはすぐに馴染んでくれたみたいで、よかった。
幸一さんったら、どこに行くにもあの子と一緒で。安川さんが呆れて笑ってた。
でも…幸一さんがすごく嬉しそうだから、それでいい。
歩が死ぬ前の快活な幸一さんが戻ってきた。

二階から、２台のチェロの音色が重なって降りてくる。
合間に笑い声も。

歩が居たころも、こんな風だったっけ。
それをＢＧＭにして、私は下でお茶を飲んだり、家事をしたりしてた。
練習が終わってから、歩はよく下に降りてきて、よくお手伝いしてくれたっけ。
シュークリームの生地を搾り出すのも、好きだったわよね？
全然丸くならなかったけど。

思えば、あの頃が一番幸せだった。
あの子が来てから、あの頃のことをよく思い出す。

分かってる、あの子は歩じゃないって。