車が幸一の家に着いたのは、
長くなってきた日差しがようやく傾きかけてきた頃だった。

「さぁ、着いたよ」

幸一の声で、卓也は車から外へ出る。
そして、幸一の家を見上げた。

「・・・」

クリーム色の外壁に、オレンジ色の瓦屋根。
少し古くなっているかもしれないけど、歩がいた時から変わっていない。
あまり変えないようにしてるんだ、歩が帰ってきたときに迷ってしまわないように。

変わったことといえば・・・

「ワンワンワンワン!!」

幸一が注意を促すよりも前に、大きなフラワーポットの影から老犬が卓也に飛びついてきた。

「○△□×△※!!」
文字通り腰を抜かす卓也。

「ごめんごめん」
と言いつつ、卓也の驚きっぷりの良さに幸一は笑いをとどめられない。

「ガスパルっていうんだ。かんだりはしないから大丈夫。こんな風に吠えるのは、最初だけだから」


そのとき、扉がカチャリ、と開く音がして、
家の中から由紀子が出てきた。