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次の日。
卓也は高伊総合病院に来ていた。
高伊総合病院は、高伊市郊外の高台にある。
真っ白な外壁の幾つかの棟からなる巨大な建物は、遠くからでも目を引く。
下々の街並みを、見下しているようにも見える。
診察室のベッドから起き上がる卓也。
裸の上半身。
胸部には、刺されたときの傷跡と手術痕が、まだ生々しく残っている。
シャツのボタンをかけながら、卓也は医師の前にあるイスに腰掛けた。
机に向かって、電子カルテに大げさなタイピングでなにやら入力している、桜庭医師の横顔。
卓也が思い出したように笑みをこらえた。
「エロギツネ・・・」
「何か言った?」
「い、いえ。何でもありません」
「うん。もう大丈夫そうだね」
事務的な声で話す桜庭医師。
その左指には、婚約指輪が光っている。
「・・・」
「痛みは?ある?」
「あの、少し・・・」
と言いかけてから、卓也は慌てて口をつぐんだ。
桜庭医師の指が、「余計なことを言うな」と言わんばかりに机をトントン叩き出したのだ。
「も、痛くありません」
「そう。じゃ、もう来なくていいですからね」
桜庭医師が、初めて卓也のほうを見た。
「高伊にも。もう来なくていいですからね」
その言葉の意味は、卓也にはよく分かっていた。
卓也は黙って立ち上がった。
「ありがとうございました」
次の日。
卓也は高伊総合病院に来ていた。
高伊総合病院は、高伊市郊外の高台にある。
真っ白な外壁の幾つかの棟からなる巨大な建物は、遠くからでも目を引く。
下々の街並みを、見下しているようにも見える。
診察室のベッドから起き上がる卓也。
裸の上半身。
胸部には、刺されたときの傷跡と手術痕が、まだ生々しく残っている。
シャツのボタンをかけながら、卓也は医師の前にあるイスに腰掛けた。
机に向かって、電子カルテに大げさなタイピングでなにやら入力している、桜庭医師の横顔。
卓也が思い出したように笑みをこらえた。
「エロギツネ・・・」
「何か言った?」
「い、いえ。何でもありません」
「うん。もう大丈夫そうだね」
事務的な声で話す桜庭医師。
その左指には、婚約指輪が光っている。
「・・・」
「痛みは?ある?」
「あの、少し・・・」
と言いかけてから、卓也は慌てて口をつぐんだ。
桜庭医師の指が、「余計なことを言うな」と言わんばかりに机をトントン叩き出したのだ。
「も、痛くありません」
「そう。じゃ、もう来なくていいですからね」
桜庭医師が、初めて卓也のほうを見た。
「高伊にも。もう来なくていいですからね」
その言葉の意味は、卓也にはよく分かっていた。
卓也は黙って立ち上がった。
「ありがとうございました」



