「だって、行くとこないし。」
「お前、俺ん家に遠慮してんのか?」
「桜庭先生がさ、あんまり…百合に近づいて欲しくないみたいなんだよ」
「あ? なに、お前嫉妬されてんのか! ま、確かにな…。俺さ、百合が婚約するまでは、百合はお前のこと好きなんだと思ってたもんな」
卓也が珍しく、声を上げて笑い出した。
「そんな!こんな落ちこぼれ、百合には釣り合わないよ」
まあ、確かにその通りなんだが。
「ま、お前にしても桜庭にしても、百合の男の趣味って悪いよな」
「桜庭先生はいいだろ、この辺で一番の外科医だって言うし。僕だってさ、彼が手術しなかったら助からなかったって、救急隊の人が言ってた。ユリが手術してくれるように、お願いしてくれたんだって」
卓也。お前は結婚ちゅうもんを分かってない。
ここは数ヶ月先に生まれた先輩として、教えてやらねば。
「あのな、そういう事と結婚は別の問題だろ? 性格だよ、性格! あの傲慢ちきのエロギツネ、どこがいいんだよ。」
「アハハ。エロギツネって」
・・・卓也、ポイント、そこじゃないんだけど。
やっぱりこいつは、半オクターブずれてやがる。



