許しを得たあいつは、宝物に触る子どものように目をキラキラさせながら、チェロに触った。
「わぁ・・・」
あいつの顔が、喜びでほころんだ。
チェロを見ただけでこんなに喜ぶ奴を、俺は初めて見た。
続けて、緩んでいた弦を手馴れた様子で締めなおす。
弦の張りと比例するように、ピンと張りつめた表情に変わっていく。
チェロを弾くときにこんなに真剣な目つきをする奴を、俺は初めて見た。
あいつが、弓を弦にあてた-。
ドレミファソラシド
ドシラソファミレド。
・・・おい。マジかよ。
こりゃぁ現代のファンタジーだぜ。
いや、ホラーかもしれない。
それは、それは美しい音色だった。



