高伊駅からの帰り道。
百合は驚いて、思わず足を止めた。

なんでそんなところにいるの?

まるで自分の心が読まれているみたいに見えた。

都心からの快速列車の止まらない、高伊駅。
駅前の商店街はどこも、もうシャッターを下ろしていて、古ぼけた街灯が行く先をところどころ照らしていて、その何個目かの下に、卓也が立っていた。
こちらに背中を向けているけれど、あの背中は間違いなく卓也だと、百合には分かっていた。

「タク」

卓也は、周りを見ていないようで、やっぱり見ていないことが多い。道路の反対側を歩けば、気づかれずに通り過ぎることもできそうだったけど、声をかけずにはいられなかった。

卓也が、驚いて振り向いた。
タク、もう少し早く気づいたほうがいいよ。靴の音、結構響いてたと思うんですけど。

「ユリ!」
卓也がうれしそうに百合に微笑みかけた。