「だけど、今は一人で行くよ。まだ・・・帰り道の、途中なんだ」

大切な、大切な人だからこそ。
今はまだ、君の手を取れないよ。
卓也は、一生懸命に言葉を紡いだ。

「僕は・・・君が好きになってくれた僕の事を、自分でももっと好きになろうと思う。」

卓也は、潤んだ瞳で百合を見つめた。

「そして、ちゃんと胸を張って、

ユリが好きだ

って言えるようになりたいんだ。」

それまで、もう少し待ってて。
・・・できたら、でいいけど。
・・・いや。
絶対に、待ってて。
僕はユリがいないと、全然ダメなのだから。


百合は笑いながら、うなずいた。
同時に、瞳からポロポロ涙がこぼれた。

タク、これはうれし涙だよ。
なんでだろう。
断られてるのに、なんだかすごく嬉しい。

不思議と寂しさは感じなかった。
離れていても、つながっていると思えるから。
二人の間を結ぶ、透明で強い何かをお互いに感じながら、二人は微笑みあった。