同じ頃。
着替えを済ませ、通用口へ向け急いでいた卓也の足が突然止まる。

通用口の前に、幸一と由紀子。

「・・・」
卓也は、思わず目をそらせた。

一瞬迷った後、卓也は視線を床に向けたまま、足早に二人の脇を通り過ぎようとする。

ごめんね。
僕はやっぱり、二人のところには帰れなかった。

「卓也」
幸一が卓也を呼び止める。

卓也は立ち止まるが、頑なに二人に背を向けたまま。

「・・・もう、行かないと。ごめんなさい」

「そうだね。行かないとな」

幸一の意外な言葉に、卓也は思わず顔を上げた。