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開演を告げるブザーが、ホールに響いた。
オーケストラの団員が、次々とステージへ出て行き、拍手に包まれる。
「できるだけ、ゆっくり歩いて!」
舞台袖で指揮者・井上が団員に声をかけている。
なんとか、これで少しでも時間を稼げないか。
彼は「必ず戻る」と言ったのだ。
脇には、車イスの幸一が既にスタンバイしていた。
「島田さん。本当にいいんですか?」
桜庭医師の問いかけに、幸一が呆れて笑い出した。
「何度聞いたら、気が済むんですか?」
「コンマス!まだ出るな」
井上は、最後に出ようとしたコンサートマスターを捕まえた。
不必要な間の長さに、会場がざわつき始める。
「マエストロ!これ以上は無理ですよ」
うーん、限界か・・・。
井上と幸一が見合った。
幸一がうなずく。
それを受けて、井上がステージへ向けて歩き出そうとした。
そのとき。
出入り口がバタンと開いて、そこに春樹。
「今着きました!」
一瞬遅れて、息を切らして卓也が駆け込んでくる。
「すみません!遅くなりました」
開演を告げるブザーが、ホールに響いた。
オーケストラの団員が、次々とステージへ出て行き、拍手に包まれる。
「できるだけ、ゆっくり歩いて!」
舞台袖で指揮者・井上が団員に声をかけている。
なんとか、これで少しでも時間を稼げないか。
彼は「必ず戻る」と言ったのだ。
脇には、車イスの幸一が既にスタンバイしていた。
「島田さん。本当にいいんですか?」
桜庭医師の問いかけに、幸一が呆れて笑い出した。
「何度聞いたら、気が済むんですか?」
「コンマス!まだ出るな」
井上は、最後に出ようとしたコンサートマスターを捕まえた。
不必要な間の長さに、会場がざわつき始める。
「マエストロ!これ以上は無理ですよ」
うーん、限界か・・・。
井上と幸一が見合った。
幸一がうなずく。
それを受けて、井上がステージへ向けて歩き出そうとした。
そのとき。
出入り口がバタンと開いて、そこに春樹。
「今着きました!」
一瞬遅れて、息を切らして卓也が駆け込んでくる。
「すみません!遅くなりました」



