最後に、本当のことを書かせてください。
読まなくても構いません。
永遠に消えようとしている自分の思いを、どこかに書き留めておきたいだけです。
私は、欲にまみれた家庭で愛を知らずに育ちました。
孤独や不安をうまく処理できずに、目に付いた美しいもの、幸せそうなものに苛立ちを覚えては破壊する日々でした。
卓也の母親もその被害者の一人です。
その後、街で偶然彼女を見かけました。
以前とは別人のようにやつれた顔で、身重の体を引きずるように歩いていた彼女の姿を見て、私は自分のしていることの意味に、初めて気づきました。
「良心の呵責」という胸の痛みを、初めて知ったのです。
しかし、自分の罪は重すぎて、会って謝ることすら私には許されないことでした。
生まれてくる子どもの幸せを、真剣に神様に祈りました。
その子が幸せになるのなら、死んでも構いません。そう祈りました。
神様に祈ったのも、まして自分ではない人のために祈ったのも、それが初めてです。



