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日は傾き始め、開演の時間が刻一刻と迫っている。
幸一は楽屋の大きな鏡に向かい、自分の姿をじっと見ていた。
タキシードに着替えている。
肩に巻いていた包帯を外し、顔に残っていたガーゼも、肌色の目立たない絆創膏に変えたので、見た目に大きな怪我を負っているとは分からない。
気づかれないようにそっと右肩を押さえたつもりだったのに、由紀子はそれを見逃さなかった。
「痛む?」
「うん、まあね」
笑って見せたけれど、由紀子には全てお見通しだろう。
今僕が何を考えているのかも。
本当は、絶対に行くなと言いたかった。
真実を知った今、もうどこへも行ってほしくなかった。
卓也の行動はそういう意味じゃないと頭では分かっていても、自分は選ばれなかったという敗北感がぬぐえないでいた。
「あなた」
由紀子が、話すのを促すように幸一の肩に手を置いた。
日は傾き始め、開演の時間が刻一刻と迫っている。
幸一は楽屋の大きな鏡に向かい、自分の姿をじっと見ていた。
タキシードに着替えている。
肩に巻いていた包帯を外し、顔に残っていたガーゼも、肌色の目立たない絆創膏に変えたので、見た目に大きな怪我を負っているとは分からない。
気づかれないようにそっと右肩を押さえたつもりだったのに、由紀子はそれを見逃さなかった。
「痛む?」
「うん、まあね」
笑って見せたけれど、由紀子には全てお見通しだろう。
今僕が何を考えているのかも。
本当は、絶対に行くなと言いたかった。
真実を知った今、もうどこへも行ってほしくなかった。
卓也の行動はそういう意味じゃないと頭では分かっていても、自分は選ばれなかったという敗北感がぬぐえないでいた。
「あなた」
由紀子が、話すのを促すように幸一の肩に手を置いた。



