その卓也に、舞台袖から静かに歩み寄ってくる人影。
子どものような顔をして眠る卓也を、声もなく見つめている。

「・・・」

由紀子だった。

しばらく呆然として、立ち尽くしていた。

これまでの卓也の、顔の表情、仕草、言葉全てが、由紀子の胸の中に次々と蘇ってきてはあのメロディーに繋がって一つになっていく。
由紀子の大きな両目から、大粒の涙がこぼれた。

やがて由紀子は、卓也のそばに座り込んだ。
全てが一つに繋がった今、由紀子の胸には一つの、大きな大きな感情があふれていた。


愛しい-。



由紀子は眠る卓也の頭を撫でた。
卓也は目を覚まさない。
声を押し殺して泣きながら、由紀子は卓也を抱きしめた。