…案の定、完全に我を失っている。
卓也はそのまま、くずおれるように春樹の足元にひれ伏した。

「ごめん、ごめんなさい…もうなんてお詫びしたらいいのか、分からない…」

ここまで謝られると、これ以上怒る気も失せてしまう。
しかし・・・

「肝心なときにケータイ濡らしやがって!このオタンコナス!」
これくらい言われたほうが、少し気が楽だろ?

「もう、本当にごめん・・・」

「もういいから、卓也。立てよ」

春樹は、おののく卓也の肩を支えて立ち上がらせた。
「まず、お前が無事でよかったよ」

「・・・。ごめん・・・」

本当は、
「ユリが!ユリが・・・」
なんて言って、ちょっと脅かしてやろうかとも思っていたんだけど。
悪ふざけが通じる空気ではなさそうなので、やめた。

「二人とも、生きてるよ」

「ほんと?よかった・・・」
卓也の肩から力が抜け、安堵の表情になった。

「ユリは軽い打撲で、1週間位の入院になるってさ」

「そう・・・」

ここからの話をどう伝えるか、春樹は悩みながら言葉を選んだ。
卓也がまたここにくずおれてしまったら、俺はこいつを引きずっていかないといけなくなる。

「・・・島田さんが、ユリをかばってくれたんだ」

「え?」
卓也の息が止まった。

「卓也」
ここは、数ヶ月前に生まれた先輩として、言わせてもらう。

「早く島田さんのそばに、行ってやりな。お前の名前を、何度も呼んでたぞ」