バカヤロー。
肝心なときに、携帯濡らしやがって。

ったくあいつは。タイミング悪いというかなんというか。
まぁ、それがあいつなんだけど。

ここは高伊総合病院。
春樹は、入り口の真正面に並んでいる待合ソファの一番前の列に座って、ようやく連絡の付いた卓也の到着を待っている。

あいつのことだ…血相変えて飛んできて、「死んでお詫びします」みたいなこと、言い出すんだろうな。

自動ドアが開いて、卓也が駆け込んできた。

「おぅ」
あぁ、やっと来た。
・・・あれ?

卓也は、春樹には目もくれずにまっすぐ突き進んでいく。

おいおいおい。
そっちに行ったら、そのまま中庭だろうが。初めての場所でもないのに、まったく。

「卓也!…タク!」

卓也がやっと春樹に気づいて、駆け寄ってきた。

「ハル!」

そのまま、すがりつくように春樹の両肩をつかんだ。

「ハル、ハルハルハル!」