ふいに、車の前に黒い影が飛び出してくる。

びしょぬれになったネコだった。

なぜか道路の真ん中で立ち止まり、こちらを振り返る。

止まる余裕はなかった。
かといって、ネコをあきらめる心の余裕もなかった。
こちらを見て固まったネコが、卓也のように見えたのだ。

幸一は咄嗟に、対向車線にハンドルを切った。

神様?
これが、
これが、さっきの祈りの答えですか?

それならば、どうか・・・
百合ちゃんだけは、どうかお守りください