「それで、遠征に向かったはいいが、オメオメと負けて戻ってきたというわけか。」
ご明察。
「出雲の国でも歯が立たないような相手に、いくら最強とうたわれる大和の国が少数向かったところでどうにかなるものでない。体裁を保ちたかっただけだろうよ。」
一応、お前の言うとおり、軍は差し向けた。
役には立たなかったが。
そのような言葉を返すために向かわされた、遠征軍も遠征軍だな。
まったく、もうすぐ田植えの時期が始まるというのに、戦にうつつを抜かすとは、王のやることではないだろう。
「面白そうだな。タケル。」
それを見ながら、にやりと笑う金時。
言わなくても、何を考えているか、すぐに分かる。
「やめておけ、お前がいなくなったら、この山は誰が見張るんだ。」
「クマ蔵にでも、やらせるさ。」
・・・クマじゃねぇか。
「どちらにしろ、戦には負けたんだ。コレで、しばらくはおとなしくなるだろうよ。」
しかし、このタケルの予想は大きく外れることとなる。
出雲の国の鬼。
遠い国の出来事。
自分には関係のない話、
この頃の自分は、そう信じて疑わなかったのだ。